01 / 集中力
宿題がなかなか進まない。
声かけ以外にできることは?
FOR YOUR CHILD / お子さまの毎日に
宿題の声かけが、親子の負担になっていませんか。
宿題を始めても、鉛筆が止まる。「ここを読んでごらん」と声をかけ、しばらくすると、また同じところで止まっている。毎日続けば、親も子も疲れてしまいます。運動の時間を増やすより、まず机に向かう習慣をつけたい、と考えるのも無理はありません。
けれど、椅子に座れていても、頭の中では外の音や、さっきまでしていた遊びが気になっていることがあります。学ぶには、目の前の問題へ注意を向け、気がそれたら戻す働きも必要です。「座ること」と「集中すること」は、同じではないのです。
この注意の働きを助ける方法の一つが、身体を動かすことです。子どもが歩いたあとに、気を散らす情報に惑わされず答えられるかを調べた研究でも、良い変化が見られました。運動が得意かどうかとは別に、身体を動かす時間を、宿題に取りかかる準備として考えてみませんか。
WHY MOVEMENT / 運動が役立つ理由
集中は、身体を動かすことでも助けられる
歩いたあと、気を散らす情報に惑わされにくくなった
集中とは、ただ静かに座ることではありません。聞くべき話に耳を向け、関係のない音や動きから注意を戻すことです。この働きと運動の関係を、約9歳の子ども20人で調べた研究があります。
子どもたちは、20分間歩いて息を整えた日と、座って休んだ日に、画面に並ぶ5本の矢印を見るテストを受けました。答えるのは「真ん中の矢印は右向きか、左向きか」。周りの矢印が反対を向いていても、そちらにつられず、真ん中だけを見て答える必要があります。
歩いたあとは、座って休んだあとよりも、正しく答えられる割合が高くなりました。つまり、周囲の情報に惑わされず、今見るべきものに注意を向けるテストで、運動後に良い結果が出たのです。
例えば、問題を解いている途中で外の音が気になっても、もう一度問題に目を戻す。その「戻れること」も集中の一部です。矢印のテストでも宿題でも、周りの刺激から必要な情報を選ぶ働きを使っています。歩くことでその働きに良い変化が出たからこそ、身体を動かす時間を、学ぶ準備としても大切にしたいのです。
運動はドーパミンの働きと、どうつながる?
脳では、神経細胞が互いに信号を受け渡すことで、見る、考える、動くといった働きが成り立っています。その信号の伝わり方を調整する物質の一つが、ドーパミンです。達成への期待や意欲、何に注意を向けるかにも関わっています。
運動は、このドーパミンの働きにも影響します。動物実験では、走る運動によって、脳内でドーパミンの放出が増えることが確かめられています。身体を動かすことが脳内の信号のやりとりを変え、それが意欲や注意の働きに影響する。この仕組みが、運動後に課題へ取り組みやすくなる理由の一つと考えられています。
宿題の内容は分かっているのに、なかなか手がつかない。そんなときには、知識を教えることに加えて、「取りかかろう」と思い、問題へ注意を向けられる状態を助けることも必要です。先に身体を動かす時間をつくるのは、そのために試せる方法です。
身体を動かすと、注意を向ける準備も進む
歩く、走るといった運動中は、進む方向や周囲の様子を捉えながら身体を動かします。脳も、入ってくる情報に反応できる状態へ切り替わります。この切り替えに関係するのが、ノルアドレナリンという情報伝達物質です。
動物実験では、運動中に脳内でノルアドレナリンの放出が増えることが示されています。この物質は、眠っている状態から目覚め、周囲の情報に反応できる状態を保つ「覚醒」と、必要な情報へ注意を向ける働きに関わります。運動がこうした情報伝達を促すことも、注意の働きを後押しする仕組みの一つと考えられています。
ぼんやりしているときは、説明を聞いても内容が入りにくいものです。宿題の前に身体を動かし、息を整えてから説明を聞く、問題を読む。身体を動かしてから休む時間は、説明や問題に注意を向けて学び始めるための準備にもなります。
動く・止まる・切り替えるが、脳を使う
合図を聞いて止まる、ルールが変わったら動きを変える。運動中は、身体を動かしながら、今何をするかも判断しています。こうした判断には、考えや行動を調整する脳の領域、前頭前野などが関わります。
例えば「青の合図で進み、赤で止まる」遊びでは、走りたい気持ちがあっても、合図を確かめて止まります。宿題で、思いついた答えをすぐ書かずに問題の条件を読み直すときにも、いったん反応を止める働きを使います。
その場で脳を使うだけでなく、運動を続けたあとの変化も調べられています。7〜9歳の子ども221人が参加した9か月の比較試験では、放課後の運動に取り組んだ群で、反応を抑えたり、課題に合わせて考え方を切り替えたりする力に改善が見られました。合図を使った遊びは、こうした力を活動の中で使う一例です。
一回の運動を、今日の学びのきっかけに
身体を動かす習慣は長く続けたいものですが、役立つのは何か月も先のことだけではありません。子どもの歩行研究のように、一回の運動後に注意の働きが良くなる結果も報告されています。
そこで、今日の宿題の前にも、動く時間と休憩をはさんでみる方法があります。帰宅してそのまま机に向かうと手が止まるなら、先に少し身体を動かし、水分をとって息を整えてから始める。取りかかりやすかったか、疲れすぎていないかを確かめながら、お子さまに合う順番を探せます。
毎週の放課後に、身体を動かす時間があること
定期的に身体を動かすことは、体力とともに、注意や行動を調整する脳の働きを支えます。放課後の運動を9か月続けた子どもの比較試験では、反応を抑えたり、考え方を切り替えたりする力に改善が見られました。一回の運動後の変化に加え、続けることで得られる良さも調べられています。
とはいえ、保護者が毎回「今日は運動させなきゃ」と計画するのは大変です。いつもの放課後に動く時間が組み込まれていれば、その都度予定を立てずに続けられます。特別な日にたくさん動くだけでなく、毎週の生活の中に繰り返し動ける時間を持つことが、積み重ねにつながります。
小さな達成が、次の集中を引き出す
少し難しい動きに挑戦し、できたことを確かめる。達成を実感できると、次の目標へ向かう理由が生まれます。運動の場面でも学習の場面でも、課題を小さく区切り、進歩を見えるようにすることで、自分から取り組む流れをつくれます。
例えば、連続で跳ぶのが難しくても、一つの目印を越えられたら「もう一つならできるかも」と次の目標が具体的になります。取り組む理由が本人に見えると、次にすることへ意識を向けやすくなります。「ほかの子より上手か」では気づきにくい、その子自身の前進を確かめることが、意欲と集中をつなぎます。
座る時間が長い小学生に、動く習慣を
授業や宿題、画面を見る時間など、小学生にも座って過ごす場面が多くあります。放課後に身体を動かす時間を確保すると、生活に切り替えが生まれます。運動、休憩、学習を組み合わせ、集中しやすい環境も整えることが、子どもの頑張りを支えます。
読書やゲームなど、座って楽しむ好きなことも大切です。その時間を守りながら、身体を動かす時間も持つ。好きな活動を一つに絞る必要はなく、一日の中で動き方を変えられることが大切です。
CONNECT / お子さまの日常につなげると
運動から、宿題に向かうまで
宿題の前に「集中して」と言われても、子どもには、どうすれば集中できるのか分からないことがあります。注意を向ける働きには、意志だけでなく、脳が情報を受け取る状態も関わるからです。
運動中にはドーパミンやノルアドレナリンによる情報伝達が変化し、子どもの歩行実験では、気を散らす矢印に惑わされず答える力に良い変化が見られました。仕組みを調べる研究と、実際の課題の結果を合わせると、身体を動かしてから学ぶという過ごし方には理由があります。
先に身体を動かし、水分をとって休んでから机へ向かう。「もっと頑張って」と求めるだけでなく、取りかかりやすい順番を大人が用意することも、子どもの集中を助ける方法です。
AFTER SCHOOL / 放課後にできること
小学生の毎日に、どうつながる?
先生の説明を聞き、問題の条件を読み取り、気がそれたら課題へ戻る。運動で良い変化が報告されている注意や行動の調整は、学習中にも使う働きです。学校で長く座って過ごしたあと、放課後に身体を動かし、休んでから学ぶ。勉強の前の過ごし方まで含めて、子どもの取り組みを支えられます。
こんな過ごし方から
- 合図に合わせて動き、見る・聞く・判断する
- 水分補給と休憩で息を整える
- 宿題・自習へ切り替え、目の前の課題に取り組む
YOUR QUESTION / 気になること
運動が苦手でも、集中のために取り入れられる?
速く走れたり、ボールを上手に扱えたりすることは、始める条件ではありません。注意の変化を調べた研究には、歩く活動も含まれています。
例えば、競争を嫌がる子なら、誰かと速さを比べずに動ける活動から。どんな場面が苦手なのか、疲れやすくないかを伝えながら、試せる動きを探します。
そのあとは、説明に耳を向けられたか、一つ目の問題に取りかかれたかを見てみてください。疲れすぎていれば、運動量や休憩を見直します。運動の記録だけでなく、その後を含めた一日の様子が、お子さまに合う過ごし方を考える手がかりになります。
GAKUMON FIT / 私たちの提案
「動く→学ぶ」を、放課後の習慣に。
ガクモンフィットでは、運動プログラムと学習時間を同じ放課後の中に組み込みます。動いて気持ちを切り替え、宿題へ向かう。この流れを日常にすることで、頑張るように促すだけではつくれない、集中しやすい生活の土台を支えます。
運動プログラムを見る研究では、何が分かっている?
子どもの注意・実行機能に、改善が見られた研究
約9歳の子ども20人の研究では、20分歩いて休んだあとは、座って休んだあとより、周囲の矢印に惑わされず中央の矢印の向きを正しく答えられる割合が高くなりました。また、7〜9歳221人を対象とする9か月のFITKids試験では、運動群で抑制や認知的柔軟性の改善が見られました。
Hillman et al., 2009/歩行と注意 ↗Hillman et al., 2014/FITKids試験 ↗
運動とドーパミン放出(ラットの実験) ↗
運動とノルアドレナリン放出(ラットの実験) ↗
掲載研究は一般的な身体活動についての知見です。活動例は、その知見を踏まえた当施設の提案です。
画像は説明用イラストです。
子どもの身体活動について:CDCの解説 ↗ / WHOガイドライン ↗











